2010-2007

various titles

2009.11.1

今回の作品に頻出する「かたち」。過去の作品で似たような形状を表したことがあり ましたが、それらとは似て非なるものです。 1995年頃から光、空気、水をモチーフとし、画面のムーブメントを表現するための「浮遊するかたち」でした。今回の「かたち」は「動かないもの」として現しています。

川の上流の岩石は、よほどのことがない限りそこに在り続け、曝されて、ゆっくり と摩耗していきます。 ヒトの傷も、年月とともに形を変えて色を違えて、残ります。分子生物学者の「動的 平衡論」によると、数ヶ月でヒトの組成は全部入れ替わっているらしいのにも関わ らず、残ります。「無く」したのに再び現れることさえあります。昨 2008 年、私は身体を様々に検査し、 勢いついでに腹部のホクロを除去しました。少なくとも 5 歳の頃から記憶にある そのホクロは 、プックリ突起して黒いものでした。それがなくなって清々して、1 年後。その同じ場所に、色と突起が再び現れました。形体があるから見えるのか、光があるから見えるのか、暗くて見えないからそれは「無く」なったのか。ブラック・アウト、ホワイト・アウト。見えなくても動かずにそこに在った。消失してはいなかった。

今回の作品に頻出する「かたち」。動かず流れないものとして、現しています。 曝され、多少摩耗した形、記憶として。