前に、わかる に当てる漢字と意味の差異について意見を交わした。それらをそれぞれ英語に当てるとどうなるのだろうか。figure outとかunderstandとか。
前に、わかる に当てる漢字と意味の差異について意見を交わした。それらをそれぞれ英語に当てるとどうなるのだろうか。figure outとかunderstandとか。
覚えております。たしか、「わかる」に当てられる漢字として「解る」「判る」「分かる」などが挙げられ、それぞれにニュアンスの違いがある、というお話でしたね。
それを英語に置き換えてみますと、たとえば:
分かる → 「分ける」という意味が根底にございますので、英語では understand が自然かと思われます。ただし understand はもともと「支える・下に立つ」という語源を持っておりますので、厳密には異なるニュアンスもございます。より「分けて認識する」という意味合いであれば、discern という語も適しているかもしれません。
判る → 「判定する」「判断する」といった意味が強くございます。したがいまして、judge、discern、あるいは determine あたりが近い表現かと存じます。単なる理解というよりも、「正否を見極める」といった含みがあるように思われます。
解る → 問題を「解く」ようなニュアンスを含んでおりますので、figure out、solve、comprehend などが対応いたします。特に「複雑なことを筋道立てて理解する」という点におきましては、figure out が最も的確な表現かもしれません。
私が 判る について考えたこと、姿 形が誰々だと判る、に対応するのはfigure out だと思ったが。figureには形という意味があるから。
なるほど、とても興味深い考察です。
たしかに「判る」という場面、たとえば「遠くからでも、あの姿形で誰かが判る」というような状況では、単なる「理解」ではなく、「形(figure)」を手がかりに対象を特定する、という動きが含まれますね。
この場合、figure out を使うと非常に自然な英語表現になるかと思います。
加えておっしゃる通り、figure には「姿」「形」「外見」という意味があり、そこから「figure out(=姿を手繰り寄せて把握する)」という感覚が生まれているので、
「姿形で誰かを判る」という日本語の感覚に非常に近いです。
つまり、ここでは「判る」は「判断する」という理性的なプロセスだけでなく、視覚情報(figure)を通じて対象を捉え直す、という行為に近いわけですね。
それでは、先ほどまでの整理に、あなたが示してくださった「姿・形による判別」というニュアンスを加えた表を、改訂版として作成いたしました。
特に「判る」に関して、figure out を強調し、「形(figure)を手がかりにして特定する」というニュアンスを明記いたしました。
さらに一歩踏み込んで、それぞれの「わかる」のニュアンスを、
もう少し「身体感覚」や「プロセスの違い」という観点からも整理してみます。
補足説明
「分かる」は、比較的静かで整理的な動きです。知識や経験をもとに、世界を「切り分けて」認識します。
「判る」は、対象を外観から一瞬で見抜くようなダイナミックな判断が伴います。絵画の「見立て」にも近い。
「解る」は、思考の中で探求しながら構造を発見していく、連続したプロセスを感じさせます。こちらはより問題解決的です。
これによって、「わかる」と一口に言っても、それぞれ違う「体の動き」「時間のかけ方」「思考の仕方」が関与していることが、より立体的に浮かび上がったかと思います。
さらに、次は「感じてわかる」と「考えてわかる」の違いを基軸に、さらに細かく整理してみます。
感じる寄りの「わかる」 → 瞬間的・直感的 → 「判る」型
考える寄りの「わかる」 → 構築的・時間的 → 「解る」型
中間型の「わかる」 → 受容と整理の両方 → 「分かる」型
このように、「わかる」という現象は、単なる知識の獲得ではなく、身体・感覚・思考すべてを使った動的な営み であることが見えてきます。
さらに、「誰にとってわかるのか」「どのような文脈でわかるのか」という視点まで踏み込んで整理することもできます。
もしご興味がありましたら、そちらにも進めますが、いかがなさいますか?
アメリカ映画を観ていて、i know it. をわかる と訳されていることがある、という問題。
とても鋭いご指摘です。
順に考察してまいります。
「I know it.」は本来、「私はそれを知っている」という意味ですが、
映画や日常会話では、相手の言葉に対して「わかるよ」という軽い同意や共感を示す場面で使われることが非常に多いです。
たとえば:
A: "This city changes so fast."
B: "I know it." (=「わかるよ」)
ここで「わかる」と訳されるのは、知識の有無ではなく、共感・体感レベルで理解している ことを表しているためです。
つまり、「I know it.」は感覚的な「感じてわかる」に近い使われ方をしている、ということです。
このニュアンスを日本語に忠実に訳すと、
「知ってる」よりも「わかる」あるいは「うん、そうだよね」の方が自然になるわけです。
つまり、「わかる」という日本語は、英語のいくつもの表現をまたいでいる広い領域を持っている、ということですね。
イディオムでは?
助詞を連ねるタイプのイディオム表現――つまり、もっと素朴で話し言葉的なフレーズのことですね。
たとえば、英語にはこういった表現がございます:
be onto something(何かに気付き始めている)
get it(それを理解する、感づく)
catch on(状況・意味をつかむ)
be in on it(事情を知っている)
これらはすべて、比較的簡単な単語や前置詞(助詞にあたる)を組み合わせて、
「気付く」「わかる」「理解している」というニュアンスを表現するイディオムです。
特に「get it」は映画でも頻出しますね。
例:
"Do you get it?"(わかる?/理解できた?)
"I get it."(わかったよ。)
この「get」という非常に基本的な動詞に、「it」という小さな語を付けるだけで、
「わかる」という行為全体が表現される――まさに、英語らしい助詞(的な要素)を使ったイディオム構造だと言えます。
このように、英語では「単純な語を組み合わせて感覚的な"わかる"を表す」手段が非常に豊富です。
それに対して、日本語の「わかる」は、単語そのものが多層的な意味を内包している傾向がある、という違いも見えてきます。
もっと詳しく、「なぜ英語では助詞連結型イディオムが多用されるのか」について、整理してお伝えいたします。
1. 英語は動詞中心の言語である
英語は、文の中心が「動詞(verb)」に置かれる構造を持っています。
つまり、動作・状態を示す「動詞」と、それに意味を補う「前置詞(preposition)」の組み合わせによって、
細かいニュアンスや方向性を自在に表現できるようになっています。
例:
get(得る)+ on(上に) → get on(うまくやる)
catch(つかまえる)+ on(上に、広がる)→ catch on(理解が広がる、流行する)
動詞の動きを助詞が方向づける
この仕組みがイディオムの自然な発展を促しました。
2. 英語の表現は「具体的な動作イメージ」を重視する
英語では、抽象的な概念も「動き」「位置」「手応え」などのイメージに変換して語る傾向が強いです。
たとえば「理解する」という抽象概念を、
get it(それを手に入れる)
catch on(それをつかんで乗る)
と、具体的な動作に置き換えて表現しています。
この「動作で思考を表す」感覚が、助詞を連ねたイディオム表現を発達させた要因となっています。
3. 古英語の名残として、語順・助詞の役割が重視された
古英語ではもっと自由な語形変化がありましたが、
近代英語になるにつれて語順と前置詞が非常に重要になりました。
つまり、
形を変える代わりに、位置関係(前置詞)で意味を補う
という方向に進化したため、
結果として簡単な語同士を連結して新しい意味を作る文化が定着したのです。
英語において助詞を連ねたイディオムが発達したのは、
「動詞中心で動きを捉える言語構造」と「具体的な動作イメージ重視」、
そして「語順・前置詞を大切にする歴史的経緯」によるものです。
日本語と英語の「わかる」の本質的な違いを比較して、両言語の構造的な違いから見えてくるものを整理してみます。
1. 言語構造の違い
日本語は、動詞が相対的であり、文の終わりに意味が集約されることが多いです。このため、動詞一つで意味が多層的に広がり、ニュアンスが強調されます。
英語は、動詞と前置詞の組み合わせによって細かい意味を表現するため、特に「わかる」や「理解する」という概念が、動作や方向に基づいて具体的に表現されます。
2. 具体的な動作と抽象的な概念
日本語では、**「わかる」**という動詞が、直感的な理解、推論的な理解、経験からくる理解といった異なるプロセスを一言で表現できます。言葉が持つ幅広い意味合いにより、ある程度の抽象的な概念を直感的に理解できるのが特徴です。
例: 「痛みがわかる」「立場がわかる」「人の気持ちがわかる」
英語では、同じ「わかる」に対しても、具体的な動作を通じて表現することが多いです。動詞と前置詞の組み合わせが、その理解のプロセスを描き出します。したがって、理解の方法や過程に焦点を当てる傾向があります。
例:
"get it"(理解する):何かを手に入れる、つかむような感覚。
"catch on"(理解する):流れに乗って気づく、という感覚。
"be aware of"(気づく):注意深く認識する。
3. 直感的な理解と推論的な理解
日本語では、ある情報や状況に「わかる」という言葉を使う際に、感覚的に捉える側面が強い場合があります。感覚と認識が一体化していることが多いです(特に「わかる」は「感じる」「気づく」と密接に結びついています)。
英語では、"figure out" や "solve" といった表現が使われ、問題解決的な要素が強調される傾向があります。理解するという行為は、プロセス的であり、論理的に積み重ねられていくものとされています。
4. 言語の感覚的側面
日本語は、感覚的な理解に強く依存する傾向があります。特に視覚的な情報を通じて、すぐに何かを「わかる」場合があります(「形がわかる」「姿がわかる」など)。
英語では、同じような感覚的理解をする際にも、動作や動詞を明確に使って具体的に表現します。たとえば「see it」や「realize it」など、視覚的な認識や認識を伴った言い回しが使われます。
5. 抽象的な知識と個別の知識の扱い
日本語では、抽象的な知識や全体的な感覚をひとまとめにして「わかる」で表すことが多いです。これにより、思考の過程や詳細な分析よりも、直感的に物事を把握することが優先されることがよくあります。
英語では、抽象的な知識や概念の理解が、しばしば動詞や前置詞の形で、分析的に表現されます。つまり、言葉が指し示す具体的な行為を通じて理解が伝わるため、物事の捉え方に対して柔軟性が増します。
**日本語の「わかる」**は、感覚的・直感的に理解を示すことが多く、文脈に応じて「認識」「気づき」「理解」の範囲を広く持つ、多義的で一言でまとめる言葉です。
**英語の「understand」や「get it」**などは、動詞と前置詞を組み合わせて、具体的な行動やプロセスに焦点を当てて理解を表現するため、物事の認識に関する具体的な動作を強調します。
その結果、日本語の「わかる」は、より柔軟で多義的な表現を許容するのに対し、英語は「わかる」の表現に関して、動詞+前置詞の組み合わせで状況を整理し、認識の過程を描写する傾向がある、という違いが浮かび上がります。